「よしよーし」
「・・・なんだ」
「母さんが、アレルギーだから駄目なんだけどさ」
「?」
「オレ、昔から大きい犬が、飼いたかったんだよな!」
「・・・」
佐為が 碁盤を 指し示す
俺は 次の一手を考える
碁石をひとつ置き 顔を見上げる
佐為は 静かに頷く
佐為がまた 碁盤を 指し示す
そして 俺は 次の一手を考える
― ……
子らは、囲碁が好きだという もっと強くなりたいという
俺は、彼らに語りかける
きっと、もっと好きになれると
そして、もっと強くなれると
窓から入る西日のまぶしさに
少し目を閉じる
ふと、瞼の裏に
彼の人が、静かに頷く姿を見たような気がした